2024/03/25 特定技能1号・2号の違いは?取得方法や職種について
はじめに
日本で働く外国人労働者にとって、「特定技能」ビザは大きなチャンスを提供します。このビザ制度は、日本の産業が直面する人手不足を補うため、外国人労働者の受け入れを拡大する目的で導入されました。ここでは、特定技能ビザの概要と、その中でも特に重要な特定技能1号と2号の違いについて解説します。
特定技能ビザの概要
特定技能ビザは、特定の産業分野で必要とされる具体的な技能や経験を有する外国人労働者を対象にしたビザです。このビザを持つ労働者は、介護、建設、農業、飲食サービス業など、政府が定める12分野(14業種)の指定産業分野で働くことができます。特定技能ビザの導入により、これらの分野における労働力不足の問題を緩和し、外国人労働者が日本での就労機会を広げることが期待されています。
特定技能1号と2号の基本的な違い
特定技能ビザは大きく「特定技能1号」と「特定技能2号」の2つに分けられます。これらの間には、就労可能な期間、活動範囲、家族の同伴可否など、いくつかの重要な違いがあります。
- 特定技能1号は、相対的に単純な作業を行う外国人労働者向けのビザです。このビザを持つ労働者は最大5年まで日本で働くことができますが、家族を同伴することはできません。特定技能1号の取得には、指定された技能試験に合格するか、あるいは技能実習2号を良好に修了する必要があります。
- 特定技能2号は、より高度な技術や知識を必要とする作業に従事する人向けです。特定技能2号のビザを持つ労働者は、より長期間日本に滞在し、家族を同伴することも可能です。また、特定技能1号から特定技能2号へのステップアップも期待されており、これにより労働者は自身のキャリアをさらに発展させることができます。
特定技能ビザは、外国人労働者にとっても、彼らを雇用する日本の企業にとっても、新たな機会を提供する制度です。各企業はこのビザの特徴を理解し、自社の人材ニーズに合わせて外国人労働者を適切に受け入れ、活用することが重要です。
特定技能1号とは
特定技能1号ビザは、日本の産業における人手不足を解消するために設けられた制度の一つで、特定のスキルや知識が必要とされる職種に従事する外国人労働者を対象としています。
特定技能1号の対象となる職種
特定技能1号ビザは、12分野(14業種)の指定された業界での就労が可能です。これには以下のような業界が含まれます:
- 介護
- 建設
- 農業
- 飲食料品製造業
- 宿泊業
- 自動車整備業 等
これらの業界は、日本における労働力不足が特に深刻な分野であり、外国人労働者の導入によってこれらの産業の持続可能性が支えられています。
取得方法と要件
特定技能1号ビザの取得には、以下の条件を満たす必要があります:
- 技能試験の合格:申請者は、対象となる職種の技能を測る試験に合格する必要があります。この試験は、実務に必要な知識や技術レベルを測定するものです。
- 日本語能力の証明:また、日本での生活と労働に必要な基本的な日本語能力があることを証明する必要があります。通常、日本語能力試験N4レベルの合格証が求められます。
※技能実習を良好に3年間終了し(技能実習2号まで)、職種と作業内容が移行する特定技能1号の業務に関連性が認められる場合は、技能試験と日本語試験が免除されます。 - 雇用契約の締結:日本の企業との間で、正式な雇用契約を結ぶ必要があります。
労働条件と滞在期間
特定技能1号ビザは、最長5年間の滞在が可能ですが、この期間は分割され、定期的な更新が必要になります。労働条件に関しては、日本の法律に基づく適正な労働環境が保証されます。これには、適切な労働時間、休日、給与などが含まれ、外国人労働者も日本人労働者と同等の待遇を受けることが期待されます。
特定技能1号ビザの導入は、日本の産業が直面する人手不足問題の解消だけでなく、多文化共生社会の実現に向けた一歩としても重要な意味を持ちます。企業は、外国人労働者を適切に受け入れ、支援することで、そのポテンシャルを最大限に活用することが求められます。
特定技能2号とは
特定技能2号ビザは、日本でより専門性の高い技術や深い知識を必要とする職種に従事する外国人労働者向けの制度です。1号に比べて、2号はさらに高度なスキルが求められ、長期的なキャリア形成と日本社会へのより深い参画が期待されています。
特定技能2号の対象となる職種
特定技能2号ビザの対象となる職種は限定されており、現在は主に「建設」と「造船・舶用工業」の分野での適用が予定されています。これらの分野では、技術力だけでなく、プロジェクト管理能力や高度な専門知識が求められます。今後、他の分野への拡大も検討されている可能性があります。
取得方法と要件
特定技能2号ビザの取得には、以下の要件が設けられています:
- 高度な専門技術の証明:対象分野で要求される高度な技術や知識を有していることを、試験合格や実務経験により証明する必要があります。
- 日本語能力:特定技能1号よりも高いレベルの日本語能力が求められる場合があります。コミュニケーション能力だけでなく、専門用語の理解も重要となります。
- 適切な雇用契約:日本の企業との間で、適切な労働条件を含む雇用契約を締結する必要があります。
労働条件と滞在期間の違い
特定技能2号ビザは、1号ビザと比較して、より柔軟で長期的な滞在が可能です。具体的には、滞在期間に上限が設けられず、継続的な更新が可能です。これにより、外国人労働者は日本での長期的なキャリア形成を目指すことができます。また、特定技能2号ビザでは家族の同伴も認められており、より安定した生活基盤の上で就労することが可能となります。
労働条件に関しては、特定技能1号ビザと同様に、適切な労働環境が保証されますが、2号ビザの場合はその専門性の高さから、より良好な待遇が期待される傾向にあります。これにより、外国人労働者は自身の技能を活かし、日本社会での更なる成長と貢献を目指すことができるようになります。
特定技能ビザ取得のための準備
特定技能ビザを取得する過程は、外国人労働者だけでなく、彼らを雇用しようと考えている企業にとっても重要です。適切な準備と理解をもって進めることで、スムーズなビザ取得と労働者の日本での活動開始が可能になります。
必要書類と手続きの流れ
特定技能ビザの申請には、以下の書類が一般的に必要です:
- パスポート:有効な外国人のパスポート。
- 在留資格認定証明書申請書:申請者の基本情報、希望する在留資格、日本での活動内容などを記入します。
- 契約書類:日本の雇用主との間で締結された労働契約書。
- 試験結果や資格証明書:特定技能分野に関する試験合格証明書や、必要な資格、経験を証明する書類。
- 健康診断書:申請者の健康状態を証明する書類。
- 日本語能力証明:日本語能力試験の結果や、それに準ずる日本語能力を証明する書類。
これらの書類を揃えた後、日本国内の雇用主または申請者が直接、最寄りの出入国在留管理局へ提出します。審査の結果、在留資格認定証明書が交付されれば、それを基にビザを発給してもらうために日本大使館や領事館へ申請します。
試験とスキル評価
特定技能ビザの申請には、特定の分野での技能や知識を評価するための試験が関わってきます。これは、申請者がその分野で必要とされる基本的な能力を持っているかを確認するためのものです。例えば、介護分野では、介護技術に関する試験や、基本的な日本語能力を測る試験が必要となります。
試験は、申請者の母国や日本国内で実施される場合があり、その内容と形式は職種によって異なります。合格することで初めて特定技能ビザの申請資格が得られるため、申請前にはしっかりと準備し、必要なスキルや知識を身につけておくことが重要です。
企業は、外国人労働者がこれらの試験に合格し、スムーズにビザを取得できるようにサポートすることが望まれます。これには、試験準備のための研修提供や、日本語学習の支援などが含まれます。適切な準備とサポートにより、特定技能ビザの申請がスムーズになります。
特定技能ビザと他の在留資格との比較
特定技能ビザは、日本での外国人労働者の受け入れを拡大するために設けられた新しいビザ制度です。このビザは、特定の産業での即戦力となる外国人労働者を対象としています。他の在留資格と比較することで、その特徴と企業が利用する際のメリットを理解しやすくなります。
特定技能ビザと技術・人文知識・国際業務ビザ
技術・人文知識・国際業務ビザは、高度な専門知識を持つ人材を対象としています。このビザは、大学教員、エンジニア、国際的なビジネスマンなど、特定の専門分野で活動する外国人が利用します。一方、特定技能ビザは、介護、建設、農業など特定の産業分野で必要とされる具体的な技能や経験を有する労働者を対象としており、専門的な知識よりも実務能力が重視されます。技術・人文知識・国際業務ビザと比較して、特定技能ビザはより広範な産業での就労が可能であり、技術や知識のレベルではなく、即戦力としての技能が求められます。
特定技能ビザと高度専門職ビザ
高度専門職ビザは、高い専門性を持つ外国人プロフェッショナルを対象にした在留資格です。このビザを持つ外国人は、研究、専門的な技術や知識を活かした業務など、特定の分野で高度な専門性が求められる仕事に就くことができます。また、高度専門職ビザにはポイント制があり、一定の条件を満たせば永住権取得の道が早まるなどのメリットがあります。これに対し、特定技能ビザは高度な専門性よりも特定の技能を要する職種に焦点を当てており、滞在期間や家族の同伴などの条件が異なります。特定技能ビザは、主に労働力不足を補うために設計されており、高度専門職ビザほどの高い専門性を求められない分野での活動が想定されています。
特定技能ビザは、日本の産業が直面する人手不足問題の解決に貢献するための制度であり、他のビザとは異なる独自の特徴と目的を持っています。企業は、これらの違いを理解し、自社のニーズに最も合った在留資格を外国人労働者に提案することが重要です。
企業が知っておくべき管理と支援
特定技能ビザを持つ外国人労働者の雇用は、企業にとって大きなメリットをもたらしますが、成功するためには適切な管理と支援が不可欠です。企業は外国人労働者を受け入れる体制を整備し、多文化共生を促進する取り組みを行うことが求められます。
外国人労働者の受け入れ体制の整備
外国人労働者を効果的に受け入れ、サポートするためには、以下の点に注意して体制を整備することが重要です:
- オリエンテーションの実施:新たに日本で働くことになる外国人労働者に対し、日本の文化や法律、労働条件、生活情報などについてのオリエンテーションを実施します。これにより、初めての環境での不安を軽減し、スムーズな職場への適応を支援します。
- 日本語学習の支援:職場でのコミュニケーションを円滑にするために、日本語学習の機会を提供します。これには、職場内での日本語教育プログラムの提供や、外部の日本語学校との提携が含まれます。
- 相談窓口の設置:労働や生活に関する相談に応じるための窓口を設置し、外国人労働者が抱える問題や不安に迅速に対応します。
多文化共生を促進するための取り組み
多文化共生を促進し、外国人労働者が働きやすい環境を作るためには、以下のような取り組みが効果的です:
- 多文化理解の促進:職場での多文化教育プログラムを実施し、異なる文化背景を持つ従業員間の理解と尊重を深めます。これには、異文化コミュニケーション研修や、国際的なイベントの開催が含まれます。
- 多様性を認める職場環境の構築:全ての従業員が平等に参加し、貢献できる職場環境を目指します。これには、多様性に配慮した人事評価やキャリア開発支援が必要です。
- コミュニティとの連携:外国人労働者が地域社会とのつながりを持ち、日本での生活に根ざすことができるように、地域コミュニティとの連携を図ります。
企業がこれらの管理と支援策を実施することで、外国人労働者は自身の能力を最大限に発揮し、企業とともに成長していくことができます。また、多文化共生を促進することで、新たな価値観やアイデアが生まれ、企業全体のイノベーションにも寄与します。
まとめ
特定技能ビザ制度は、日本企業にとって重要な外国人労働力を確保する手段として導入されました。この制度を通じて、労働力不足が深刻な産業分野において、必要な技能を持った外国人労働者を正式に雇用することが可能になります。以下に、特定技能ビザの活用によるメリットと、今後の対策や企業の取り組みについて提案します。
特定技能ビザの活用によるメリット
- 人手不足の解消:介護、建設、農業など、特定の産業分野における人手不足を効果的に解消できます。
- 多様性の促進:異なる文化背景を持つ労働者を受け入れることで、職場の多様性が促進され、新たなアイデアや革新的な解決策が生まれる可能性が高まります。
- 国際競争力の向上:外国人労働者の導入により、グローバルな視点を持つ企業文化が育成され、国際競争力の向上に寄与します。
今後の対策と企業の取り組みについての提案
- 適切な受け入れ体制の構築:外国人労働者が安心して働ける環境を整備するために、適切なオリエンテーションや日本語教育支援、相談窓口の設置などの受け入れ体制を構築することが重要です。
- 多文化共生の促進:職場での多文化共生を促進するために、従業員間の異文化理解を深める研修やイベントの実施、多様性の尊重を意識した企業文化の醸成に取り組むことが望まれます。
- 長期的な支援とキャリア開発の提供:外国人労働者が長期的に働き、成長していくためには、キャリア開発の機会の提供やスキルアップ支援が不可欠です。特に、特定技能1号から2号への移行を目指す労働者に対しては、必要な支援を積極的に行うことが重要です。
特定技能ビザ制度の活用は、ただ外国人労働者を受け入れるだけではなく、彼らが日本社会および日本の企業で活躍し、共に成長していくための機会を提供することを目的としています。企業は、この制度を最大限に活用するために、前向きで継続的な取り組みが求められます。